PRO Neg. Std

 これもネガフィルムです。

 「フジカラーPRO NS」というフィルムをデジタルで疑似的に再現したもののようです。

 

 PRO Neg. Hi と同様、彩度を抑えたナチュラルな発色をするフィルムです。

 PRO Neg. Hi との大きな違いは、コントラストです。

 こちらはコントラストが弱めで、とくにシャドーの階調がゆたかに出ます。

 FUJIFILM の公式サイトでは、スタジオなど光の強い場所でのポートレートに適したフィルムとされていますが、もっといろんな場面に応用が利くと思います。

 私は、逆光での撮影や、彩度よりも階調を優先したい時などに、このフィルムをよく使っています。

 看板や道路標識などの彩度も抑えられるので、街の風景を撮る時にも使えて便利です。

 シャドー部分が色かぶりしないのは、PRO Neg. Hi と同じです。

 青空の色は、PROVIA をもっと淡くしたような淡泊な色調になります。彩度の低さもあって、冬景色なんか撮るのもいいと思います。

 

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X-T30 XF35mmF1.4 R 絞り優先AE 1/800秒 F 5.6 ISO 320 PRO Neg. Std

 ダイナミックレンジ 200%。

 冬の朝、低い太陽に、斜めから半逆光で淡く照らされている町並みを撮ってみました。

 逆光気味でもシャドーが黒つぶれせず、色かぶりもせず、自然な感じに描写できたように思います。

 冬の朝の淡い日ざしの感じなども、うまく伝わっていますでしょうか。

 

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X-T30 XF16-80mmF4R OIS WR 絞り優先AE 1/160秒 F11 ISO 160 +0.7EV PRO Neg. Std

 焦点距離 44.7mm。RAW で撮って、現像段階でこのフィルムに変更しました。

 高台から見下ろした街の風景です。

 強めのサイド光で、PROVIA など他のフィルムですと、陰影が黒っぽくなったり色かぶりしたりしがちな、やや難しい場面だと思います。

 PRO Neg. Std を選択したことで、明暗差のある都市の光と陰を、階調ゆたかに自然な色調で撮ることができました。

PRO Neg. Hi

 これはポジではなく、ネガフィルムです。

 おそらく「フジカラー PRO H」というフィルムをデジタルで疑似的に再現したものと思われます。

(明記されてはいないものの、FUJIFILM の公式サイトで、このフィルムと「フジカラー PRO H」の対応を示唆するような図がありました)

 

 ネガフィルムということで、ポジフィルムの「記憶色」とは異なるナチュラルな発色が特徴のようです。

 全体に、彩度を抑えたおとなしめの発色という印象です。

 コントラストは PROVIA よりも強く、ASTIA と同等くらいの印象です。

 また、ポジフィルムと異なり、シャドー部分が色かぶりしないという大きな特徴があります。

 シャドー部分の色かぶりを避けるためにこのフィルムを選択するという使い方ができそうです。

 ただそのぶん、シャドー部分が黒つぶれしやすいようにも思われますので、これは一長一短かもしれません。

 状況に応じたフィルムの選択ができると、表現の幅が広がるかもしれませんね。

 青空の色は、ごくわずかに紫っぽく感じます。ただ、Velvia のような鮮やかな色ではなく、もっと落ち着いた感じの色調です。

 

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X-T30 XF35mmF1.4 R 絞り優先AE 1/8000秒 F 1.8 ISO 160 PRO Neg. Hi

 RAW で撮って、現像段階でこのフィルムに変更しました。

 35mmF1.4 での作例です。すすきの輝きを逆光で捉えてみました。

 彩度が低く、コントラストが強調されたこのフィルムに特徴的な雰囲気が伝わりますでしょうか。

 背景の建物は逆光で陰になっていますが、色かぶりしていないのもおわかりいただけるかと思います。

 

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X-T30 XF16-80mmF4R OIS WR 絞り優先AE 1/38秒 F4 ISO 320 -0.3EV PRO Neg. Hi

 焦点距離 26mm。これも RAW で撮って、現像段階でこのフィルムに変更しました。

 16-80mmF4 での作例。都会のおしゃれなクリスマスツリーです。

 コントラストが高く彩度がおとなしめなので、重厚感のある雰囲気を PRO Neg. Hi でうまく表現できたかなあと思います。

 右奥のシャドー部分も色かぶりせず、自然な発色になっているように思えます。

Velvia

 ポジフィルム「Velvia」をデジタルで疑似的に再現したものです。

 ASTIA よりもさらに彩度・コントラストが高く、鮮やかさが際立つフィルムです。

 

 原色が鮮やかに出るという非常にわかりやすいコンセプトのフィルムなのですが、使いこなすのは意外と難しいように思います。

 使いどころを間違えると、草木の緑色が強く主張しすぎて、自然な感じに見えなくなることもあります。

 まだ技量不足なのだと思いますが、私はこのフィルムを上手に使いこなせていない気がします。

 ただ、PROVIA や ASTIA では表現しきれない、紅葉のオレンジ色ですとか、春先のピンク色のお花とか、このフィルムでなくては出せない色というのもあります。

 青空は、濃厚な青で、少し紫がかった感じの空になります。ASTIA の青空とはまた少し違った趣が感じられます。

 シャドー部分を大きく持ち上げると、紫かぶりが出るようです。

 

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X-T30 XF35mmF1.4 R 絞り優先AE 1/600秒 F 2.8 ISO 320 -0.3EV Velvia

 ダイナミックレンジ 200%、カラークロームエフェクト 弱、ハイライトトーン -2、シャドートーン -1。JPEG 撮って出しです。

 35mmF1.4 での作例です。鬱蒼とした樹々の中に浮かび上がるオレンジ色の紅葉を撮りました。

 日の光が当たっている葉っぱの部分は、-0.3EV 補正でもかなりの明るさですので、ダイナミックレンジを上げて白とびを防ぎつつ Velvia で彩度もしっかり出して、明るいながらも鮮やかな表現を目指しました。

 

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X-T30 XF16-80mmF4 R OIS WR 絞り優先AE 1/180秒 F8 ISO 160 +1EV Velvia

 焦点距離 24.7mm。RAW で撮りましたが、無修正のまま現像しています。

 16-80mmF4 での作例です。青空の下で映える河津桜を撮りました。

 これも、プラス補正で明るく撮りながら花の色もしっかり出せる Velvia ならではの作品であるように思います。

 青空が、若干紫がかったような Velvia 特有の空の色で描写されているのも、おわかりいただけますでしょうか。

ASTIA

 ポジフィルム「ASTIA」をデジタルで疑似的に再現したものです。

 PROVIA よりも、彩度・コントラストともやや高めで、より鮮やかな「記憶色」のフィルムです。

 

 透明感のある明るい描写が得意なようです。

 とくに、青空を、最も美しい青で再現してくれるのがこのフィルムです。

 これは私の個人的な傾向だと思いますが、写真を撮る時には空の青を入れることが多く、それでこの ASTIA は、私がよく使うフィルムになりました。

 空だけではなく、青色 LED のイルミネーションでも、見たままの正確な青を再現してくれます。

 草木の緑色は、実際よりもやや黄色っぽく写るような印象があります。

 ハイライトの階調の粘りが強く、他のフィルムよりも白とびしにくいように思えます。

 このためか、富士フイルムの公式サイトでは、屋外で撮るポートレートに適したフィルムとの記載があります。

 シャドー部分を大きく持ち上げると、PROVIA よりも強く青かぶりが出るようです。

 このため、日陰の被写体や逆光での撮影時は、他のフィルムのほうが使いやすいかもしれません。

 逆に、単焦点レンズで背景をぼかしながら、わざとハイキー気味に撮ることで、背景が青みをおびながら幻想的にぼけてくれる、なんてこともあります。

 何がどうよい方向に転ぶのか、なかなか予想がつきませんが、そこがまた写真の面白いところですね。

 

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X-T30 XF35mmF1.4 R 絞り優先AE 1/320秒 F 4 ISO 160 +1EV ASTIA

 JPEG 撮って出しです。

 35mmF1.4 での作例です。秋の草花を単焦点レンズで撮ってみました。

 露出を上げて、ぼかされた背景がやや青みがかったような、ふんわりした幻想的な感じにうまく撮れてくれました。

 

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X-T30 XF16-80mmF4R OIS WR 絞り優先AE 1/320秒 F11 ISO 320 +0.7EV ASTIA

 焦点距離 21.2mm、ダイナミックレンジ 200%、シャドートーン -2。

 16-80mmF4 での作例です。高台から眺める広大な景色を撮りました。

 逆光気味で明暗差が激しく、難しい場面でしたが、ダイナミックレンジを高めて、シャドーも持ち上げています。

 光を浴びて輝く雲を、ハイライトの階調ゆたかに撮ることができました。

 空の青さも鮮やかで美しく、ASTIAの特徴が生きた作品になってくれたように思います。

PROVIA

 フィルムカメラ時代のポジフィルム「PROVIA」をデジタルで疑似的に再現したもののようです。

 ポジフィルムですから、鮮やかな「記憶色」が特徴です。

 ただ PROVIA は、3 つあるポジフィルムの中では最もおとなしめの発色になっているようです。

 このため、フィルムシミュレーション全体の中では、彩度・コントラストとも中程度のフィルム(スタンダード)という位置づけになっています。

 フィルムの選択に迷ったら「とりあえず PROVIA」という使い方もできて便利です。

 

 スタンダードというだけあって、おおむね見たままの色がそのままきれいに写ります。

 とくに、草木の緑色をとても美しく再現してくれるフィルムです。

 青空もきれいに出ますけれども、青の彩度はやや低めに見えるかもしれません。

 夕焼けのオレンジ色は、見たままのオレンジ色がとてもいい感じに出ます。

 ただオレンジ色がきれいに出るとはいっても、紅葉を撮るにはもう少し彩度がほしくなります。

 シャドー部分を大きく持ち上げると、わずかに青っぽく色かぶりするように思えます。

 

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X-T30 XF35mmF1.4 R 絞り優先AE 1/1900秒 F 1.8 ISO 160 +0.3EV PROVIA

 シャドートーンは -1 です。

 35mmF1.4 での作例です。暖かそうな日なたのベンチを撮りました。

 シャドーを 1 段階だけ持ち上げて、遠くの木陰のところを少し明るくしてみました。

 柔らかい芝生の感じ、透き通った葉っぱ、遠くのほうでキラキラと光っている樹々の透明な空気感のようなものが伝わっていますでしょうか。

 

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X-T30 XF16-80mmF4 R OIS WR 絞り優先AE 1/950秒 F 4 ISO 320 PROVIA

 焦点距離 26mm、ダイナミックレンジ 200%、カラークロームエフェクト 強。

 16-80mmF4 での作例です。冬のはじめ、曲がり角のこんもりした緑の、光と陰を撮ってみました。

 逆光気味なので、ダイナミックレンジを上げて白とびを防いでいます。

 また、光が強く当たっている部分は色が浮ついた感じになりそうだったので、カラークロームエフェクトで草本来の色に近づけてみました。

 日ざしの暖かさを感じていただけたらうれしく思います。

フィルムシミュレーション

 今回からは、作例をまじえながらフィルムシミュレーションのことを書いていきます。

 まだカメラを十分使いこなせていない初心者の私が、とりあえずの主観で思ったことを書いています。

 なので、将来また考えが変わって、ここに書いたことと違うことを書くかもしれませんが、その際はどうかご勘弁ください。

 

 X-T30 で使えるフィルムシミュレーション、種類が多すぎてなかなか覚えきれません。

 そこで、ものすごく大まかに、「ポジ」「ネガ」「その他」「白黒」の 4 つに分けてみました。

  • ポジフィルム PROVIA、ASTIA、Velvia
  • ネガフィルム PRO Neg. Hi、PRO Neg. Std
  • その他    クラシッククローム、ETERNA
  • 白黒     ACROS、モノクロ、セピア

 これなら何とか覚えられそうです。

 「その他」と「白黒」は難しそうなので、まずは「ポジ」と「ネガ」を使ってみることにしました。

 

 作例は、同じものを RAW で撮って、「ポジ」と「ネガ」で現像してみたものです。

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X-T30 16-80mmF4 R OIS WR 絞り優先AE 1/400秒 F 5.6 ISO 160 +0.3EV PROVIA

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X-T30 16-80mmF4 R OIS WR 絞り優先AE 1/400秒 F 5.6 ISO 160 +0.3EV PRO Neg. Std

 どちらも、カラークロームエフェクト 弱です。

 

 ポジフィルムとネガフィルム、違いがわかりますでしょうか。

 ポジフィルムは色がはっきり出る感じ、ネガフィルムは色がおとなしめという感じがしますよね。

 X-T30 を使いこなすために、私はまずこの違いを覚えました。

 富士フイルムの公式サイトを見ても、ポジフィルムは「見たままに忠実な記憶色」、ネガフィルムは「記憶色系とは異なるナチュラルな」発色、という理解でよいみたいですね。

 あと「ポジ」や「ネガ」にもそれぞれ種類があって、これがまた少しずつ特徴があるのですが、それは後日また書いていきますね。

 ちなみに、フィルムシミュレーションを使うには、JPEG で撮るか、RAW で撮ってカメラ内で現像しないといけないのですが、X-T30 はカメラとパソコンを接続することで、パソコンの画面上でカメラ内 RAW 現像ができてしまうので、とても便利ですよ。

ズームレンズが届きました

 X-T30 を購入した時に、品薄で入手できず、予約していたズームレンズが届きました。

 16-80mmF4 というもので、なんと 6 段の手ぶれ補正機能つきという優れものです。

 先に入手していた 35mmF1.4 との相違点を知りたいと思って、いつもの公園をまた撮ってみました。

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X-T30 XF16-80mmF4 R OIS WR 絞り優先AE 1/210秒 F 8 ISO 160 +0.7EV ASTIA

 焦点距離は 16mm、シャドートーン -1、JPEG 撮って出しです。

 広角側で撮っているからというのもあると思いますが、35mmF1.4 と比べて、空の青がすごくきれいに出ている感じがしますね。こちらのほうがより風景向きのレンズなのかもしれません。

 露出を上げて撮ったから彩度が下がるというわけでもなく、全体に色乗りが良好な気がします。

 木々の緑が色あせているように見えますが、これは X-T30 と 35mmF1.4 の購入から1か月がたち、秋が深まったためです。

 

 また、35mmF1.4 と同様、こちらも繊細な写り方をします。

 この写真でご注目いただきたいのは、青空のグラデーションの美しさです。

 D3400 でこの透明感のある繊細なグラデーションはなかなか出せないように思います。

 

 参考までに、D3400 で同じ場所を撮った写真もお見せします(今年の夏に撮影)。

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D3400 AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR 絞り優先AE 1/320秒 F 8 ISO 100

 細かい設定などは何も考えずただシャッターを押すだけで、これだけきれいな写真が撮れるのですから、D3400 もすごいカメラだと改めて思います。

 でも青空の描写という点では、X-T30 の表現力がさらに一歩抜きんでているような気がしました。

 

 あともう一点、フィルムシミュレーションについて。

 試行錯誤の結果、ASTIA というフィルムが、どうやら私のイメージする青空に最も近い空の描写をしてくれるように思えました。

 まだ使いこなせていないフィルムもあるのですが、ある程度フィルムの使い分けもできるようになってきましたので、次回からはフィルムシミュレーションのことを書いていこうと思います。

 写真も、カメラやレンズの比較のために毎回同じ景色にしていましたが、さすがに単調になってきましたので、そろそろいろんな作例を出していきたいと思っています。